洗うな その①

さて、今月から3回にわたって、「洗うなシリーズ」を書いてみたいと思います。
1回目の今回のテーマは「体は石鹸でゴシゴシ洗うな!」です。
「ボディシャンプーとか使っちゃってないですか?」「タオル・スポンジでこすってないですか?」私が1日のうちで繰り返す質問の中でかなり上位にランキングするセリフです。
最近のスキンケア情報でも、「洗いすぎ」が皮膚に良くないことは十分伝えられています。
ただ、何をもって「洗いすぎ」とするのか・・・。というのが難しいところなのです。
本来であれば、皮膚科学会から、年齢・表面皮脂量・日常の生活での汚物の付着状況などを考慮した「洗浄方法ガイドライン」などを作成しなければならないのでしょうが、様々な個人差・季節・体調による変化を考慮すると、トラブルの生じない責任もって紹介できる方法を見いだせないというのが実情かもしれません。
私も開業以来、皮膚にトラブルをかかえた「洗いたい患者さん」の要望に応えられるような洗浄剤・洗浄用具・洗浄方法などがないものかと試行錯誤を重ねてきました。
一番の問題になる界面活性剤なら洗浄力が強いラウリル硫酸Naは避けて、アミノ酸系の方が良いか?
それとも自然界でも分解できる古典的な脂肪酸Na(石鹸)が結果的に毒性が低いか・・・。などなど、 自分も実験台にしながら界面活性剤以外にも、他の合成添加物の性質もそれなりに勉強しました。
さらに、洗浄道具もナイロンタオルではだめだから、眼鏡ふきのようなきめの細かい繊維や海藻から作ったスポンジで摩擦力がかなり小さいものなども試したりしました。しかし、結論としてはやはりどう考えても皮膚にトラブルがある人は洗浄剤(石鹸、ボディソープ)・洗浄用具(スポンジ、タオル類)を使って洗浄しない方が良いというものでした。
今では、さらに展し、トラブルがない人でも洗浄剤(石鹸、ボディソープ)・洗浄用具(スポンジ、タオル類)を使用しないほうが良いのではと考えています。
湯船にゆっくりただつかるだけ。それだけです。
皆さんご存知のように皮膚は皮脂でおおわれています。
当然、皮膚で悪臭を発したり、肌荒れを起こすために出てくるわけではなく皮膚を保護するための被膜を形成しているのです。
ただ、TV,雑誌などでは皮脂の悪い面ばかりがクローズアップされています。なぜならば、皮脂が時間経過とともに酸化するからです。
確かに酸化した皮脂は炎症を引き起こし肌のトラブルのもとになります。その量が多くなれば被害も大きくなります。では、どうして酸化した皮脂が増えるのでしょうか・・・。
それは、皮脂が洗浄によりこそぎ取られた結果、あわてて増産されます。
結果その皮脂が次々と酸化していくからです。
この悪循環を断つためには洗浄剤(石鹸・ボディーソープ類)の使用をやめると解決します。
酸化した皮脂やほこりはほとんどがお湯でとれますが、酸化してない皮脂はすべてが取れず、かなり残ってくれます。すると、皮脂が残っている状態ですからあわてて増産される皮脂もできずバランスの整った状態が維持されるのです。
実際、患者さんに「私も全然石鹸つかってないですよ〜」というと」、ほとんどの患者さんは「汚物を見るような眼」で眉間にしわを寄せ「ほんとですか?」とおっしゃいます。
断っておきますが、けしてお風呂に入らないのではなく、毎日入っています。湯船につかってしっかりすすいでいます。
体調・食事内容によっては体臭が気になるときもありますからお湯の温度調節は適宜しています(35-40度前後)が、稀に石鹸を使用しても脇・股・足の裏ぐらいです。さすがに職業上、手洗いはつきものですので、 業務前にコーティング剤を使用して手荒れの予防に努めながら洗っています。
私は皮フ科医で、様々な経験をつみながら患者さんを通して色々と教えてもらえるので「洗浄剤を使用しない」自分に自信をもって生活をすることができます。
しかし、これだけ連日「バイキン」「除菌」「臭い」「皮脂汚れ」「加齢臭」などの洗浄剤の使用を促す情報にさらされ続けていると、
特に「菌」や「臭い」は目に見えないので客観視できない部分でもありますから洗浄剤をしようして油をとってツッパリを感じることで皮脂が取れていることを確認し、香料を付着させて体臭を感じなくすることで清潔になった気分を演出しないと不安になる気持ちもよくわかります。
ですから、理解していただくには地道に少しづつ絡まった糸をほぐすような努力が必要なのだと痛切に感じている今日この頃です。
私だけでなく、タレントのタモリさん、福山雅治さん、ほかの人気?女性モデルの人たちもこの「洗わない入浴法」を実践している人がいるようですので、興味ある方は「タモリ式入浴」で検索してみるといろいろと情報が出てきますので、ご覧になってみてください。