急激に寒さが増すこの時期は帯状疱疹にかかる患者さんが増え始める時期でもあります。
「4-5日前から腰が痛いと思って湿布貼っていたらかぶれちゃって」
皮膚科医だとこの問診だけで帯状疱疹かな?と思うぐらい、よくあるストーリーです。
この帯状疱疹、皮膚病の中では比較的耳にする機会がある病気ではないかと思うのですが、患者さんの中では色々と尾ひれのついた噂話があるようで・・・、
患者さんから実際うけた質問からいくつかご紹介すると、
「ほっしんが、ぐるっと回って一周すると死ぬってきいたんだけど、ここまでならまだ大丈夫ですか?」
→原則帯状疱疹は1つの神経の走行にそってでますので、あちこちに広がると「汎発化」といって、重症のサインです。
かなり抵抗力が下がっている可能性があるのでまんざら100%否定できる話ではないですが、きれいに一周することはありません。
「一回やれば二度とやらないんでしょ?」
→一度かかれば免疫が増強されるので当分はかからないのですが、私の患者さんの中での最高記録は4回という方がいらっしゃいました。
「お年寄りの病気だって効いたんだですけど、私まだ20代ですよ!」
→基本的には水痘(みずぼうそう)にかかった事がある方は誰でもなる可能性があります。私の患者さんでも5歳のおこさんがいらっしゃいました。
帯状疱疹とは幼少期にかかった水痘の原因であるウイルスが神経の根元に住みついてしまう事に始まります。通常は見張り役の白血球がいて
少しでも暴れだそうものなら退治してくれるのですが、免疫が下がる状態(疲労、ストレス、慢性疾患)になり白血球の元気がなくなったり、
長期間この水痘ウイルスを思い出す機会(通常は家族の中や集団生活の中でしらないうちにウイルスと接触しているのです)がないと白血球がだんだんこのウイルスの存在自体を忘れてしまって、攻撃対象として監視しなくなってしまいます(医学的には抗体価が下がるといいます)。
その隙を狙ってウイルスが再度暴れ始め、住み着いている神経を壊しながら皮膚まで出てくるのが帯状疱疹です。
核家族化がいわれ久しい日本では、水痘に接する機会が減っており、今後はますます水痘ウイルス対策を忘れた白血球が増え、帯状疱疹を発症する患者さんが
増えてくると思われます。これを予防するためには忘れてしまった記憶を呼び起こさなければなりません。簡単なのはご近所に水痘のこどもがいたら積極的に
接触しにいく事でしょうか?。ただ、少し怪しまれるかもしれませんので、現実的には水痘の予防接種を使用する事でしょう。
60歳以上に帯状疱疹の予防接種をする事で、その発症を51.3%減少させ、帯状疱疹の後遺症である神経痛も66.5%減少させるという報告があります。
ただ、保険の適応がないのでまだまだ日本では広まりにくいのかもしれません。
ちなみに、私の場合はこの仕事を続けている限り(水痘の患者さんに接する度に抗体価が上昇するので)帯状疱疹にはならないはず?です?が、体調には十分注意したいものです。
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