そろそろ足し算より引き算で

最近、病気と付き合うときのスタンスとして薬を処方することについて考えさせらることがよくあります。
ほとんどの病気は、行き過ぎた生活習慣が招いた結果として自覚できる症状としてあらわれたものだと思います。
戦後を経験されたかたと話をする機会があればお分かりかと思いますが、半世紀前までの生活は様々な「不足」との格闘で、すべての考えが足し算・掛け算を中心に回ってきたように思います。
医療の世界も足りないものを補うことが中心で良かったのかもしれませんが、その後の社会の変化とともに「足し過ぎ」たことによる新たな問題に直面する機会が増えました。そしてそれ修正するために別なものを足すことで解決しようとしてきたように思います。
 ただ、算数が得意な方ならすぐにお分かりかと思いますが「足し算」しすぎたら「引き算」で元に戻すほうがやはりシンプルなのではないかと思われます。
 なぜ、こんな抽象的な内容をお話ししたかといえば、最近、患者さんをの会話の中で「薬の副作用」について良く聞かれるからです。
薬は足し算ですから、どんなに優秀な数学者が計算方法を編み出したとしても元の状態に戻すことはできません。ですから、単純に言えば「足し過ぎ」てしまえば副作用がでるわけで、それが自覚できる「病気」とまでいくかどうかは医療に携わる者のさじ加減という形になるのだと思います。
しかし、本当の治療は上手に引き算をすることにあるのだと思います。日々新しい「もの」が世の中に生み出され「足し算」はこの後も続いていくわけで、それにともなう様々な副産物としてあらたな病気も誕生してくると思われます。
そんな時、我々医療に携わるものの役割はいかに原因を突き止め、それをどうやって上手に引き算するかを考えることにあると思います。
ですから、今後の賢い患者さんの付き合い方としては「引き算」を上手に楽しむことだと思います。病院や診療所が単に薬を配る場所ではなく、病気、症状をより少なく快適に過ごせる生活の方法を確認する場所にするのがこれから本当に必要になるのではと感じています。